化粧品ブランドの広告づくりに携わる方であれば、「薬機法」という言葉を耳にしない日はないはずです。表現ひとつで措置命令や課徴金のリスクを負う一方、2026年に入り、この薬機法をめぐる状況は大きく動き始めています。
2025年に成立した改正薬機法が2026年から段階的に施行されているのに加え、化粧品の広告表現そのものを見直す「Jビューティ国家戦略」の議論も急速に進展。2027年度中には、これまで禁止されてきた数値訴求や体験談表示が解禁される可能性が見えてきました。
本記事では、2026年時点で押さえておくべき薬機法の基本と最新改正、そして2027年に予定される規制緩和の見通しまでを、化粧品事業に携わる方向けに整理して解説します。
今こそ化粧品事業者は薬機法の動向をチェックすべき
薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)は、化粧品の広告表現を厳しく制限する法律です。違反した場合、行政からの措置命令や課徴金の対象となるだけでなく、SNSでの拡散によるブランドイメージの毀損、取引先からの信用喪失といった経営リスクに直結します。
一方で、2025年の法改正や2027年に見込まれる広告規制の見直しは、化粧品ブランドのマーケティング戦略そのものを変える可能性を秘めています。規制強化と規制緩和が同時に進む今だからこそ、最新動向を正確に把握し、先回りして準備を進めることが競合との差別化につながります。
【現状確認】2026年時点の薬機法・化粧品広告のルール
化粧品で認められる「56項目」の効能効果表現とは
現行の薬機法および厚生労働省の「医薬品等適正広告基準」では、化粧品が標榜できる効能効果は56項目に限定されています。「肌を保湿する」「乾燥による小ジワを目立たなくする」といった表現は認められる一方、医薬品的な効果を暗示する表現や、科学的根拠のない誇大表現は禁止されています。
また、「浸透」という表現を使う場合は角質層までである旨を明記する必要があるなど、細かなルールが多数存在し、担当者の感覚だけで判断すると違反につながりやすいのが実情です。
課徴金制度・措置命令という重い罰則リスク
2021年8月に導入された課徴金制度により、不当な広告表示を行った事業者には、対象商品の売上高に応じた課徴金が課される仕組みが整いました。措置命令や課徴金は、単なる表現の修正では済まず、事業全体の信用に関わる重大なリスクとなっています。年々運用が厳格化する傾向にあるため、社内チェックだけに頼らない審査体制の構築が重要になっています。
【2026年施行】令和7年法律第37号(2025年改正薬機法)のポイント
改正の背景と施行スケジュール

2025年5月14日、国会で薬機法等の改正法が可決・成立し、同月21日に「令和7年法律第37号」として公布されました。この改正は、後発医薬品の供給不安や製造・品質管理をめぐる不正事案の頻発、新しい創薬モダリティの台頭といった課題に対応するためのもので、薬機法に定められた5年ごとの見直しのタイミングと重なる形で行われています。
施行は段階的で、大部分の規定は2025年11月20日から施行され、一部の規定は2026年5月1日から施行されています。さらに一部条項は2027年5月までに順次施行される予定です。
化粧品ビジネスへの実務的な影響
今回の改正は医薬品の品質・安全性確保が主眼であり、化粧品広告そのものを直接改める内容ではありません。ただし、薬機法全体として監視・安全確保の体制が強化される流れの中で、広告領域における措置命令や課徴金の運用も一段と厳格化していく可能性が高いと見ておくべきです。
とくに2025年以降に新規のLPやSNS施策を立ち上げる事業者は、これまでの社内基準のままでは審査が通りにくくなるケースが増えると想定されます。表現チェックの基準そのものを見直すタイミングに来ているといえるでしょう。
【2027年に向けて】Jビューティ国家戦略と広告規制緩和の動き
自民党「Jビューティ産業研究会」の提言とは
規制強化と並行して進んでいるのが、化粧品広告の表現の幅を広げる方向の議論です。自民党有志による「Jビューティ産業研究会」(会長・林芳正総務大臣)は、日本の美容産業を国家戦略産業として位置づけ、官民連携でのグローバル展開加速を目指す提言を2026年5月15日に官房長官へ提出しました。背景には、国を挙げて展開する韓国の「Kビューティ」への強い危機感があります。
2026年7月13日に開かれた第8回会合では、この提言が政府の「骨太の方針」「成長戦略」「知的財産推進計画2026」の3つの正式文書に反映されたことが公表されており、Jビューティは名実ともに国の成長政策の一つとして位置づけられつつあります。
解禁が見込まれる「数値訴求」「体験談表示」
もっとも化粧品事業者にとってインパクトが大きいのが、広告表現そのものの見直しです。現行制度では、化粧品の効能効果の標榜は56項目に厳しく制限されており、「保湿率〇%」といった数値による訴求や、お客様の体験談・口コミの広告への活用は認められていません。
2026年7月の会合では、厚生労働省がこの通知を見直し、2027年度(令和9年度)中を目途に、数値データや使用体験談の表現を解禁する方向で検討を進めていることが明らかになりました。実現すれば、海外ブランドと同じ土俵で訴求力のある広告展開が可能になり、化粧品マーケティングのあり方そのものが大きく変わる可能性があります。
Jビューティコンソーシアム設立の動き
あわせて、官民連携で海外展開を後押しする「Jビューティコンソーシアム(仮称)」の2026年内設立に向けた準備も進められています。業界団体と関係省庁が連携し、Jビューティ産業の国際競争力強化を制度面から支える体制づくりが進行中です。
2027年の規制緩和で何が変わる?想定されるインパクト

現時点での議論を踏まえると、2027年度の見直しによって想定される変化は主に次の2点です。
数値訴求の解禁:「保湿率〇%改善」など、具体的な数値データを用いた効果訴求が可能になる見込み
– 体験談・お客様の声の活用解禁**:これまでNGとされてきたビフォーアフターに近い形の体験談表示が、一定の条件のもとで認められる可能性
ただし、これらはあくまで検討段階であり、正式な通知改正には至っていません。また、規制緩和が実現しても、根拠のない誇大表現や医薬品的効能の標榜が認められるわけではない点には引き続き注意が必要です。
規制緩和を待つ前に、化粧品事業者が今からやるべき3つの準備
制度が変わってから動き出すのでは、変化の恩恵をいち早く享受することはできません。今のうちから準備しておきたいポイントは次の3つです。
- UGC・体験談の計画的な蓄積:解禁後すぐに活用できるよう、日頃から本物のお客様の声やレビューを収集・整理しておく
- エビデンス(根拠資料)の整備:数値訴求が解禁された際にすぐ使えるよう、成分・効果に関する客観的なデータや試験結果を整理しておく
- 広告審査体制の強化現行制度下での厳格な運用強化にも対応できるよう、社内基準の見直しや外部専門家によるダブルチェック体制を整える
まとめ:薬機法の「今」と「これから」を正しく押さえて事業成長へ
薬機法をめぐっては、2025年改正による段階的な施行という「規制強化」の流れと、2027年度を目途とした広告表現の「規制緩和」という、一見相反する二つの動きが同時に進行しています。
現行ルールを正しく理解して違反リスクを避けることはもちろん、将来の規制緩和を見据えて今からエビデンスやUGCを蓄積しておくことが、これからの化粧品ブランドの競争力を左右します。制度の変化を「待つ」のではなく、「備える」姿勢こそが、これからの化粧品マーケティングで差をつける鍵になるでしょう。
参考情報源:
– WWDJAPAN「Jビューティ国家戦略化が前進 化粧品広告規制は令和9年度に見直しへ」(2026年7月)
– 日本ネット経済新聞「化粧品広告の数値・体験談、2027年度中にも解禁へ」(2026年7月)
– 厚生労働省「令和7年の薬機法等の一部改正について」
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公開日:2026年 | カテゴリ:コピーライティング | 執筆:ライジング・コスメティックス マーケティング戦略室



